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霜月文庫

確かな理論、確かな実践。

「海上輸送戦」補足~戦前・戦間期

はじめに

動画「海上輸送戦」の補足です。

海上輸送戦 第1部 by 霜月みかん 歴史/動画 - ニコニコ動画

海上輸送戦―戦時輸送船団小史― - YouTube

戦前・戦間期

船腹保有

しばしば、戦時海上輸送関連の書籍では、「日本は戦前、世界第3位の海運国だった」と紹介される。これを数値で見てみると、1939年の時点で、アメリカ(海洋のみ)は日本の1.7倍、イギリス(本国のみ)は3.2倍の船腹を保有しており、英米とはまだまだ大きな差があったことが分かる。

この数値の初出は、おそらくロイド統計だと思われるが、元の資料は見つけられなかった。なお、松尾[pp.46-47]は、1890、1900、1910、1920、1930、1939、1948、1958年の世界の船腹量を掲載している。

船舶改善助成施設

1932~1936年の間、景気対策と船質改善のために実施されたスクラップ・アンド・ビルド政策[松尾 pp.57-58]。有事に徴用されることが前提とされた。

優秀船舶建造助成施設

船舶改善助成施設の終了後、1937年以降、より軍事色の濃い優秀船舶建造助成施設が実施された。特に、大型優秀船建造助成施設で建造された「橿原丸」「出雲丸」は、それぞれ、航空母艦「隼鷹」「飛鷹」になったことで有名。その他の船も、特設空母や特設巡洋艦などとして運用された。

船員動員の強化

この項や上述の助成施設については、戦没した船と海員の資料館での展示が詳しい。各種法令については、アジア歴史資料センターを利用して調べた。施行日は最後(参照の前)の附則に、公布日は最初の方に書かれている。

開戦前の各種推定

船腹保有

大井[pp.48-51]を元に計算した。「小学校の学童にもわかるように」と書かれているが、第3年度の計算に間違いがある。第3年度は、被害40~60万総トン、建造80万総トン、第2年度の船腹555~595万総トンという予想の上で、船腹595~615万総トンと記載されている。正しく計算すれば、575~635万総トンである。

石油備蓄量

岩間[p.60]の表9に分かりやすく整理されている。

戦時に必要とされる船腹量

「どれだけの船腹があれば全面的な大戦争ができるか」[大井 p.51]を示す数値であり、民需は300万総トンが必要だった。これは、戦時中の民需船腹量を考える上での基準となっている。ただし、開戦直後は陸軍の輸送に船腹が必要なので、一時的に民需を削ることになっていた。

参考文献

「海運」(松尾進 有斐閣 1959)
「海上護衛戦」(大井篤 学習研究社 2001)
「戦争と石油(1)」(岩間敏 石油・天然ガスレビュー Vol.40 No.1 2006)